伝書鳩なら、交渉担当はいらない。

仕事

秋晴れ。

朝活は思考の整理が出来て良いのだ。

さて、仕事のお話。

仕事をしていると、外部の会社や取引先と交渉する場面がある。
金額だったり、契約条件だったり、役割分担だったり、スケジュールだったり。

当然ながら、自社にとって少しでも良い条件を引き出すのが交渉担当者の仕事である。

で、そんな時。
上からこんな指示が降りてくることがある。

「この条件でいってくれ」

いやいやいや。
それ、かなり無理あるでしょ。
どう考えても、こちらの都合だけじゃないですか。
相手にメリットほとんどないじゃん。
みたいな条件。

まあ、ある。
会社だからね。

経営者や上司には経営者や上司なりの事情があるし、社内的に譲れない事情もある。

問題はここからだ。

さて、その条件をどう相手に伝えるか。

「会社からこう言われていますので」
「この条件じゃないと難しいです」
「上の決定なので」

そのまま相手にぶつける人がいる。
ある意味、非常に忠実である。
上から100で降りてきたものを、品質を一切劣化させず100のまま相手に届ける。
伝書鳩としてはかなり優秀だ。(笑)

でも、それって「交渉」なのだろうか。

相手からすれば、「ずいぶん自分たちの都合だけを言う会社だな」となる。

そして厄介なのは、その評価は交渉担当者個人だけには向かないということ。

「この人は強引だ」ではなく、「この会社は強引だ」になる。
会社の看板を背負って外に出るというのは、そういうことなのだ。


会社の評判は、こういうところでつくられる。

広告やホームページには、
「お客様とともに」
「パートナーシップを大切に」
「共創による価値創造」
なんて立派なことが書いてある。

しかし、会社の本当の評判をつくるのは、たぶんそういうコピーではない。

実際に取引した時に、「この会社とは話ができる」と思ってもらえるかどうかだ。

こちらにも事情がある。
相手にも事情がある。
当然、利害が一致しないことだってある。

そこで、
「こちらの事情はこうです。ただ、このままだと御社にメリットがないので、こういう形ならどうでしょう」
と考えられる人。

上からの指示を無視するわけではない。
会社側の条件も守ろうとする。
でも同時に、相手が飲める条件を探す。

100対0ではなく、70対30なのか、60対40なのか、
別の条件を加えることで50対50にできないか。

その落とし所を探すのが交渉なのだと思う。

「上に従うこと」と「会社のために動くこと」は、同じではない。

ここはけっこう難しい。

組織で働いている以上、上司の指示には従う。
それは当然である。
勝手に条件を変えていいわけでもない。

でも、
「上司の言う通りにすること」と「会社にとって最善の行動をすること」は、必ずしも一致しない。

ここを間違えると怖い。

目の前の上司からは評価されるかもしれない。

「ちゃんと言ったな」
「よく押し切った」
「こちらの条件を守った」
と。

しかし、その交渉によって相手から、「あの会社とはもう組みたくない」と思われたらどうなのだろう。

その上司からの評価は上がった。
でも会社の信用は下がった。

さて、それは本当に会社員として良い仕事をしたと言えるのだろうか。

商売は、その一回で終わらない。

ここが一番大事だと思う。

一回だけの取引なら、強引に条件を飲ませて勝つこともできるかもしれない。
でも商売は続く。
業界が狭ければ、なおさらだ。

「あそこは自分たちの都合しか考えない」という評判は、意外と早く広がる。

逆も同じ。
「あそこは厳しい条件でもちゃんと相談できる」
「無理なことは無理と言うけど、代替案を出してくれる」
「何とか双方にメリットが出る方法を考えてくれる」

そういう会社には話が集まる。
新しい案件が来る。
誰かを紹介してもらえる。
困った時に声をかけてもらえる。

これから企業が生き残っていくためには、
「取引できる会社」であること以上に、「一緒に組める会社」であることが重要になる。

だから外部との交渉は、単なる条件闘争ではない。
会社の信用をつくる営業活動でもあるのだ。

交渉担当者は「翻訳者」なのだと思う。

上から降りてきた要求には、その背景がある。

利益を確保したい。
リスクを避けたい。
社内ルールを守りたい。
経営判断として譲れない。

だったら交渉担当者が相手に伝えるべきなのは、要求そのものだけではない。

その要求の背景にある「会社として守りたいもの」を理解し、それを双方が成立する条件に翻訳すること。

そして相手から返ってきた事情も、今度は社内に翻訳する。

「先方が嫌がっています」だけではなく、
「この条件では先方のこの部分が成立しません。ただし、ここを変更すれば当社の目的を守ったまま合意できそうです」
と持ち帰る。

そこまでやって、初めて交渉担当なのだと思う。

上の言うことをそのまま伝えるだけなら、交渉役はいらない。

メールでいい。
もっと言えば、生成AIでもできる。(笑)

人が間に入る意味は、
考えること。
相手を見ること。
背景を読むこと。
社内事情と相手事情を整理すること。
そして、双方が次も一緒に仕事をしたいと思える着地点をつくること。

もちろん、いつでもWin-Winになるほどビジネスは甘くない。
時には断ることもある。
条件を譲らないこともある。
交渉決裂だってある。

でも、「こちらの要求を通したか」だけで交渉の勝ち負けを決めてはいけない。

本当に見るべきなのは、

その交渉の後にも、その会社と誰かが仕事をしたいと思ってくれるか。なのだと思う。

上司の顔を見て仕事をするのか。
会社の未来を見て仕事をするのか。
似ているようで、これはけっこう違う。

そして外部との交渉ほど、その人がどちらを向いて仕事をしているのかが、よく見える場面はない。
会社の未来を守る交渉とは、目の前の条件を勝ち取ることではない。
「またこの会社と組みたい」と思ってもらえる関係を残すこと。

たぶん、それも立派な会社の資産なのだ。

ためブロ

福島県生まれ。 普通の公務員の家に育ち、小〜中学校はバスケットボール部に所属。 強豪校のあまりに厳しい練習とレギュラー争いに嫌気がさし、個人スポーツをやることに。 高校で見つけたのがテニス。 当時まだ硬式テニス部は少なく、進学した高校でもまだ「テニス愛好会」だった。 テニスといえば女子、しかも愛好会という緩そうな雰囲気に惹かれ入部。 しかし、女子はおらず、東北なのでクレーコートが使えるまで、毎日ランニングと素振りの日々。 加えて、素振りをした途端に、先輩に「センスなし」から一刀両断。(笑) そんなテニスとの出会いが、今に至り、テニスで生きているという不思議な人生。 テニスを軸にたくさん勉強させてもらったことを駆使して、 テニス業界、スポーツビジネス界で生きている今現在。 座右の銘は「努力に勝る天才なし」 セミナー講師や研修も得意技。

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