AIR JORDAN

最高のスポーツアイコンかも。
さて、かれこれ30数年前のこと。
テニスコーチとしてまだまだ駆け出しだったワタクシ。
資格は日本テニス協会の公認指導員のみ。
これはどちらかと言うと、地域指導者的なもので、取得のハードルも高くはなかった。
周囲には「プロ」の称号を持ったコーチの方々もちらほら。
JAPAN PROFESSIONAL TENNIS ASSOCIATIONのロゴが入った
ウォームアップやキャップを被った方々がいた。

これはそんな昔のものではないけど、背中のロゴへの憧れは大きかった。
ああ、あの方、プロなんだなぁと憧れの眼差して見るばかりだったワタクシにも、
なんと、プロコーチ資格取得のチャンスが回ってきた。
まずは最初に4日間の合宿を受けなければいけない。
それを経て初めてプロテストの受験資格が得られるのだ。
この合宿もなかなかの地獄の合宿だったのだが、その話はまた今度。
そして、いよいよプロテストの日。
たしか名古屋のテニスクラブでのテストだった。
ワタクシたちを判定するテスターは、錚々たるメンバー。
元日本代表プレーヤーだった方、有名コーチ、かつての名プレーヤーばかり。
まさに若造の駆け出しコーチにとっては、目の前に出るだけで緊張マックスな方々である。
まず最初はグリップテスト。
コンチネンタル、イースタン、セミウエスタンなどの各種グリップを示し、
その特徴、利点や不利点について説明し、テスターの質問に答える。
ワタクシの担当テスターは有名なプロテニスコーチ第一人者。
ワタクシがイースタンフォアハンドグリップを示した時にこう言った。
「ふ〜ん、そうやって握ってるの?」
「え?は、はい」(動揺)
「そうなんだ。生徒さんにもそう教えてるの?」
「あ・・そ、そうです」(一気に冷や汗が吹き出す)
「へえ、そう」
間違っているとは言われてはいない。
もちろん間違ってもいないと思う。
イースタングリップを正しく握れないコーチなんていないと思うし、
研修合宿でもさんざん教わったことだから、間違うわけもない。
しかし、そんな風に言われてめちゃくちゃ動揺した。
おそらく、本当に分かっているのが揺さぶりをかけたのだ。
ここで「あ、いや。こっちです」などと変えたら、分かっていないってことになったのだと思う。
その手法がテストとして正しいかどうかはわからない。
ただ、その聞き方よ。
「ふ〜ん、キミはそんなふうに教えてるの」って、そんな意地悪な聞き方しなくてもねえ。
その方は、今となってはお会いして(緊張はしながら)お話をする間柄にはなったけど、
その頃はそんなひと言で汗だくなるほどの雲上人。
きっとあの時のことはまったく覚えていないだろう。
たくさん受験しにくる有象無象の若手コーチのひとりだったから。
1日明けて、オンコートのテストが始まった。
打球、そしてプライベートレッスン、グループレッスンのテストである。
4名を相手にするグループレッスンテストの担当テスターは、これまた有名コーチ。
実は研修合宿の講師でもあったのだが、めっちゃ怖かった。
正直、「あ〜あ、当たっちゃった」と思った。
テーマはサービス。
4名の女性受講者に対して、ボールの威力を出すことにテーマを絞り、
身体の使い方などの矯正法を施した。
人生で一番緊張した30分を終え、戻ろうとするとテスターが言った。
「あ、キミなぁ」
「はいっ!」(直立不動)
「サーブのデモ、1本ミスったやろ」
「あ、はい。すみません!」
「プロは100%入れなあかん」
デモンストレーションは身体の捻りを見せるもので、
ボールが入る入らないまではそこまで意識をしていなかった。
プロっていうのはフラットサーブも100%入れなきゃいけないのかと思いつつ、
そんな速いサーブ、100%入るわけないじゃんかと心の中で思ったりもした。
プロの厳しさを伝えるために言ってくれたのだろうと解釈はしたが、
甘くはないぜと思い知らされたひと言だった。
結果、テストには合格していたが、そのテスターもワタクシのことなど欠片も憶えていないと思う。
(言葉から分かる通り、関西の方なので、今もワタクシのことなんぞは知らないと思う)
何とか冷や汗流しまくりのプロテストは、プロフェッショナル3というカテゴリに合格。
まあ、厳しいことも言われたけど、これで自分も晴れてプロコーチになったと、
メッチャ嬉しかったのと、認定証が届くまで「JPTA」のキャップを被るのを我慢していたのも忘れられない。
同時に、もうあんな緊張の中に身を置くのはごめんだぜと思ったのも本音。
が、しかし、資格というのはそういうものではない。
ワタクシが取得したのは4ランクのうち、下から2番目のもの。
その上のプロフェッショナル2を目指さなければいけない。
さすがに最上位のプロフェッショナル1は国内でも数十人しかいないので、
そこは目指すもなにもって感じだったけど、
またアップグレードテストであの緊張感を味わうのかと
思い切り暗くなってしまった20代のワタクシであった。
とまあ、そんな感じで理不尽(に感じた)なプレッシャーにさらされたプロテスト。
テスターの皆さんは、その時に言ったことはおろか、受験生の顔も覚えていないだろうが、
こちとら一言一句、一生忘れねえからなの勢いである。
如此く、言った側と言われた側の感覚には天地ほどの違いがあるのだ。
そして、半年後のアップグレードテスト、さらなる事態が・・・
長くなったので、次回のお楽しみってことで。
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