昔の話 その3

ネタが無い時に細々と続いている、昔の話です。

その2では、いきなり暗雲が立ち込めた
ワタクシのテニス人生のスタートのお話でしたが、
よく考えると、今日に至るまで暗雲が
立ち込めっぱなしのような気もしてきました。

つまり、それは標準だってことですね、ハイ。

さて、テニス部入部以来、来る日も来る日も
ボールを打つことは無く、ランニング~素振りが続きます。
どっちにしても、4月の頭じゃ、自転車で30分かかる
市営のクレーコートも霜が降りて使うことは出来ないのですが。

とはいえ、これじゃさすがにストレスが溜まる。
この溢れる若さをどこで発散すれば・・・?

つい、口をついて出た言葉が、
 「ああ~!いい加減、コートに立ちたいよ~!」

それを聞いていた、鬼のような先輩、
 「お前、そんなにコートに立ちたいのか?」

ワタクシ、
 「ハ、ハイ、テニスしたいです」

先輩、
 「そうか、そりゃそうだ。ちょど良かった。
  お前ら一年生、全員弓道場の裏に集合!」

おお、やっとテニス出来るのか。
でも、硬式テニス部のコートは無かったはず。
期待と不安を胸に外に出ると先輩が、

「え~、このたび学校から許可が出た。
 この場所は硬式テニス愛好会のものだ!
 ついては、ここにコートをつくる。
 ほれ、お前たちこれを持て!」

渡されたのは、軍手・つるはし・スコップetc。
およそ、テニスには使いそうも無い道具の数々。

「あの~先輩。もしかして、テニスコートって僕等が?」

「ん?他に誰がいるんだ?」

「そりゃ、建設業者とか・・・」 (心の声)

「2週間もありゃ、出来るだろ?じゃあ、よろしく!」

立ち去る先輩たち。
残されたワタクシたち。(呆然)

確かに部に昇格する前の愛好会じゃ、
予算も無かったのでしょうが。

いったいどうやってテニスコートつくるの?
かろうじて軟式経験者が口を開いた。

 「まずは土を全部掘り返すんだよ」

仕方が無いので、適当に目星をつけて、
土を掘り始めた一年生軍団、約15人。

この日から、すっかり飽きてしまったランニングと素振りは
つるはしを打ち下ろし、スコップで掘り起こすという
新たな作業に変わったのである。
・・・・って、どこがテニス部なんだぁ!

来る日も来る日も土掘り。
ようやく、掘り起しが終わり、ここに種を蒔けば
良いネギが育ちそうな具合になった。
腹いせに、本当にネギを植えてやろうかと思ったが、
先輩に殺されそうだったので、次は土を固める作業へ。

土を締めるために、塩化ナトリウムを蒔き、
巨人の星で有名な、人力ローラーを何往復も引き回す。
なんだか映画で見た、ローマ帝国の奴隷を思い出す。

そして、サイズを測り、ラインテープを打ち、
ネットポスト・ネットを張る。

めでたく、数週間の苦労の末、コートが出来上がった。
いやぁ、長かった。

ランニングで鍛えた足ばかりか、土木作業で上半身も
すっかりたくましくなってしまった一年生軍団。
青函トンネルでも通したかのような喚起の雄たけび。

そこに、先輩たちがやってきた。

「おお、出来たなぁ。じゃあ、練習するか。
 一年、球拾いの配置につけ!」

ガ~ン!そりゃ、そうかもしれないけど・・・

自分たちでつくったコート、それは先輩たちのもの。
自分たちは球拾い。
何と理不尽な・・・とは思わなかった。
体育会ってそういうものだと思っていたし。

ちなみにこのコート、当然バックフェンスなどはあるはずもなく、
ボールを後ろにそらすと、果てしなく遠くまでボールを
拾いに行かなければならなかった。

サイドライン方向は用水路。
そらせばボールは入水。
先輩にしこたま怒られる。

そして反対側の後ろには弓道場。
弓道部がビシビシと矢を放っている。
下手にボールをそらして、弓道場に入ろうものなら
イノシシよろしく撃ち抜かれるかも。

なんとスリリングな球拾いか。

絶対にボールをそらしちゃイカンと死ぬほど頑張ったおかげで
反射力も身についた。

ランニングで脚力を、コートづくりで筋力を、ボール拾いで反射力を。
もしかして、そういう意味の1ヶ月だったんですか?先輩!

そんなわけないですね。
ジャッキーチェンの映画じゃないんだから。

結局、コートでボールを打つのはいつになるのか
分からないまま、時は流れていくのでした。

続く・・・多分

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