ジャッジの話 その5

というわけで、テニスの試合はセルフジャッジだ。

もう20年以上前のこと。
毎トーの本戦を観にいった。
会場は今は無き、小田急成城テニスガーデンだったと思う。

確か入場料は無かった。
お金を掛けずにハイレベルの試合が観られるのは
貧乏な駆け出しコーチの身には有難かった。

毎トーの本戦だから、出場しているのは強い選手ばかりだ。
プロはもちろん、実業団で活躍している選手とか、
学生でメッチャ強い選手とか、もう雲の上の方々ばかり。
(だから観に行ってるのだけど)

ひと通りコートを見て回って、ひとつの試合に腰を落ち着けた。
プロ選手と実業団選手の試合だった。
両者とも実力者でもあるし、クレーコートだったというのもあり、
かなりスローペースの試合ながらもつれにもつれた。

生意気を承知で言わせてもらうと、
「あの選手がこんなシコリ合いをするのか」
と驚いたほど、互いに打ち込めなくなっていた。
当然、1ポイント決まるまでに長い時間がかかり、
1ポイントが非常に重く感じられた。

試合はセルフジャッジだった。
そして、ジャッジも揉めに揉めた。
際どいところに落ちたボールの判定は必ず揉めた。

 「おいおい!」
 「ホントかよ?」

ネット際まで詰め寄り、ネットを越えようかという勢いで、
ボールマークを見たりしていた。
これの繰り返しだった。

一触即発の緊張した空気と気まずさがコートを支配した。
試合を観ているのは、ほぼワタクシひとりだったので、
なんとなく立ち去ることも出来ず、
そのまま気まずさを共有しながら最後まで観戦した。
(もちろん選手はワタクシのことなど気にしていないが)

結局、プロが押し切ったと思う。
最後に2人が握手をしたのが奇跡に思えるほど気まずい試合だった。

これが(日本の)トップ選手の試合の
普通の姿なのかはワタクシには分からない。
親善試合ではなく超真剣のトーナメントだし、
ポイントもランキングも生活も掛かっている。
そうは言っても、ここまでの試合は観たことが無かった。

セルフジャッジでここまで揉める試合は多いのだろうか。
セルフジャッジが悪いほうに転んだ時の怖さみたいなもの
見てしまったような気がした。

プロレベルでこれじゃ(いや、プロだから揉めるのか?)、
アマチュアではもっと難しいよなと思った。

この話、なんとか次回で終わりにしたい。(長いよ!)

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